「嫌よ。絶対に嫌。」
世界を救う旅にも、もうピリオドを打つ時期が近づいた中。
ヒルダは22歳の行動とは思えぬほど、子供のように大きく首を振った。
be natural
滅多に我侭を言わない年下の恋人から、頼まれた。
ヒルダとしては、叶えたい気持ちが溢れてはいる。
なんせ、彼女にとって、ヴェイグは初めて付き合う異性だから。
だが・・・
「なんで、わざわざ隠しているモノを見せなきゃいけないのよ。」
「俺はヒルダのそのままの姿でいて欲しいんだ。」
「人が嫌がってるのに、やらせる気?」
「・・・駄目か?」
悲しそうにヒルダを見つめるヴェイグに思わず、胸が傾いてしまう。
しかし、ここで負けたら今までの苦労が水の泡。
ヒルダは頑張って、ねばってみる。
「人の前だと、思い切り反感を受けるわよ。」
「そんな奴らは放っておけばいい。」
「だけど、私と一緒にいる・・・あんたが悪く思われるのは嫌よ。」
今度はヒルダが『涙うるうる作戦』を実行してみる。
ここまで自分を捨てたか、と自分に誉めてあげたい気分になる。
だが、彼には逆効果だったようだ。
「俺の事は大丈夫だ。それに、お前は俺が必ず守る。」
負けた。
優しく微笑みながら言われてしまっては、もう無理だ。
抵抗しようがない。
ヒルダは、その言葉に照れている自分が恥かしい気持ちになってきた。
「分かったわよ。だけど、やっぱり人のいる所は止めて。」
「そうか。だったら、町を出る前に外していこう。」
「・・・町から出た後でもいいでしょ。」
「俺がヒルダを守るから、平気だと言っている。」
あっさりと妥協案を否定されて、ヒルダは何もいえなくなる。
だけど、これも惚れた弱み、ってやつかしら?
仕方なく、彼女は自分の頭の被り物に手をやった。
潔く布をほどくと、ずっと隠してきていた折れた角と耳が現れる。
「それじゃあ、出かけましょう。」
少し機嫌が悪そうに言ったにも関わらず、
相手は笑みを絶やさない。
「なによ。そんなに嬉しいの?」
「ああ。」
率直な返答に、ヒルダは戸惑う。
今まで、ここまで人に愛されたことはないからだ。
そんな彼の姿を見ていると、どうしても不安がつのる。
この幸せがいつまで続くのだろうか、と。
ヴェイグにはクレアの方が相応しいのではないか、と。
「本当に・・・私なんかでよかったの?」
答えようと口を開いたヴェイグだが、何を思ったのか黙り込んだ。
ヒルダが不思議に思っていると、耳に何かが触れてくすぐったい。
「行こう、ヒルダ。」
何が起こったのか、よく分からない。
ヒルダは口に手を当てながら、先を進もうとするヴェイグを注意深く見正面から見てみる。
アカトゲサボテンのように耳まで真っ赤になっていた。
「見るな。」
余程照れくさいのか、ヴェイグは手でヒルダの目を覆い隠す。
その行動を見て、ヒルダは自分だけが恋愛に慣れていないわけでない事を実感した。
「ねえ。今度からは、言ってくれれば耳も角も隠さないであげるわよ。」
「本当か?」
「今みたいに人の前で耳にキスが出来たら、だけどね。」
「・・・・・・」
彼女が見かけを気にせずに過ごしていける日まであと少し・・・
―あとがき―
あぅぅぅ。自分で無から創作を作るのが難しくなってきました。
内容が統一しなくなってきたのです。
こう、ねずみ式の様に色々な話の展開や終わり方が出来るので。
・・・そろそろお題に頼ろうかな?(苦笑)
<2005.06.04>
ブラウザバック、ぷり〜ず