元気に遊んでるヒトが2人。
それを暖かく見守っているヒトが1人。
その中で一生懸命書物に目を通しているヒトが1人。

そして、彼らから離れた所でくつろいでいるヒトが2人。




手回し




 「なぁ、マオ。あの2人ってさぁ・・・付き合ってんのか?」

誰とも関わろうとはせず、しかしお互いに近い場所にいる2人。
ティトレイは不思議に思い、マオに聞いてみた。

 「ヴェイグとヒルダが?付き合ってないでしょ。」
 「そうだなあ。恋愛に関しては鈍感なヴェイグちゃんじゃあ、無理かもしれねえな。」

そこにアニ―が会話に入ってきた。

 「ここは、やっぱりヴェイグさんが告白した方がいいですよ。」

唐突なアイディアを提案され戸惑った2人だったが、
他にする事もなかったので、協力することにした。








 「俺とクレアさんがピンチになったら、どっちを助ける?」
 「クレアに決まっている。あいつは1人では戦えない。」


戸惑いもなく直ぐに答えられて、ティトレイは一瞬怒りを感じた。
だが、そのまま質問を続ける。


早速計画を実行しようと、ヴェイグに話し掛けたは良いが、意外とてこずることを知った。
本人曰く、恋をしていないらしい。
まずは、自覚させることが必要だと感じた3人は、
身近なことから質問してみていた。


 「じゃあ、俺とヒルダの時は?」
 「ヒルダに決まっている。」
 「ちなみに、その理由は?」
 「ヒルダはお前と違って、後衛のタイプだから助けがいるだろう。」


クレアの時とは若干意味が違う。
ヒルダの場合は、思い切り戦闘能力でしか考えてないようだ。


 「じゃあ、僕とヒルダだったら?理由も教えてヨ。」
 「マオも後衛とはいえ、戦えるだろう。ヒルダを助ける。」


比較する人物を間違えたようだ。
今度はアニ―を使ってみる。
アニ―の方が戦闘の経験が少なく、おまけに対抗できる力もない。
今までの様子だと、アニ―を選ぶかと思われた。


 「ヒルダだ。」


 希望が見えた!

3人の中で同時に思う。

 「どうしてですか?私の方が1人だと危ないと思うんですけど。」

一応、確信できるように聞いてみる。
すると、ヴェイグは理由がわからないのか、戸惑った様子だ。

嬉しく思ったティトレイは率直に言った。

 「ヴェイグ、答えられないのはお前が恋してるからだぜ!」
 「・・・鯉?魚がどうしかしたか?」
 「いや、ヴェイグ・・・そうじゃなくて。」
 

どうやら、『恋』という言葉すら身近に感じないようだ。
結局、一日を費やして語ったにも関わらず、
彼がヒルダに恋をしていることを自覚してもらえなかった。







 「う〜ん。こうなったら、ヒルダが告白するしかないんじゃない?」

頭を抱えながら出した結論。
しかし、問題は誰がそのことについて触れるかだった。

ヒルダならば、『人のことは放っておいて』と言うだろう。
もしくはヴェイグが好きなことを肯定しないかもしれない。


 「やっぱさ、女の子同士話しやすいだろうから、アニ―が言ったら?」
 「お!そりゃあ、いいな!」
 「で、でも私が言ったら、お節介だろうし・・・あ、ティトレイさんが言ってくださいよ。
  ティトレイさんが言ったら、冗談としてとらえられますよ、きっと。」


誰もヒルダの機嫌をそこねたくない。
そんな考えから、なかなか聞く人を選ぶことができなかった。


やっとのことで、ティトレイが聞くことになり、3人はヒルダの元へと急いだ。
ところが、その途中、後ろから声をかけられた。


 「お前ら、どこへ行くんだ?」
 「ヴェ、ヴェイグ・・・べ、別になんでもねえよ?」


明らかに挙動不審なティトレイ。
疑いの目でヴェイグはじっと見つめた。
アニ―とマオは、救いようがないのは十分理解できたので、その場から去ろうとする。


 「ヴェイグ?何やってるのよ。」


しかし、それもヒルダが行く道を防いでしまって、できなくなった。
2人は即座に、いかに自分たちはティトレイと関係がないかを説明できるか考えた。


 「いや。ティトレイの様子がおかしいんだ。」
 「そんなの、いつもの事でしょ。放っておけばいいの。」
 「だが・・・」
 「そう。せっかく、あんたがデートに誘ってくれたのに、放棄するの?」







「「「は???」」」






3人はヒルダの言葉に耳を疑った。
聞き間違えていなければ、『デート』と言ったはずだ。
マオが勇気を出して、問いただしてみた。


 「ヒルダとヴェイグ、今からデートしにいくの?」
 「ああ。買出しに行くだけだが・・・」
 「それでも、恋人同士が一緒に出かけるのは『デート』なのよ。さ、行きましょう。」


2人は未だに呆然と立っている3人を置いて、どこかへ行ってしまった。


 「何時の間にそんなことになったんだ?」
 「さぁ?」
 「とりあえず、あの2人に関しては問題解決だネ!」


だが、結局は自分たちは無駄な時間を過ごした気がする。
そんな思いを密かに抱いていた3人であった。






 ―あとがき―
結構、ヴェイグって手が早そう。
そんなわけで、こんな話。
2人よりも3人が目立ってて、ごめんなさい。
<2005.06.03>

ぶらうざばっく、ぷりーず