「ヴェイグ、ヒルダがまだ帰ってこないの。呼んできてくれない?」
ミナ―ルの町を一行が旅立とうとすると、
ガジュマの姿の幼馴染にそう言われた。
ヒュ―マ×ハーフ=?
仲間を町の出口で待たせ、ヴェイグは迷わず図書館へと向かった。
彼女が別れる前に、調べたい事があると言っていたからである。
図書館へ入ると、ヒルダが何冊もの本を開いたまま、唸っていた。
調べたいものは何もなかったのだろうか、と心配に思いながらヴェイグは声をかけた。
しかし、ヒルダは未だに唸りつづける。
仕方なく、もう一度声をかけてみると、今度は文字通り飛び上がった。
「え、な、なんで、あんたがここに?」
慌てて開いてあった本を閉じていくヒルダが聞いてきたので、
ヴェイグは不思議に思いながらも素直に出発することを伝えた。
「だが、調べものが終わってないようなら、もう少し待ってもらおうか?」
「い、いいのよ。きっと、見つからないわ。」
「・・・やはり、純粋なヒトの体が欲しいのか?」
聖獣の試練では、ハーフのままでも満足そうだったが、
やはり今となって再び嫌になったのかと思い、聞いてみる。
だが、ヒルダは笑って答えた。
「そんな事、もう考えてないわ。私は私だもの。」
「そうか・・・だったら、何を調べていたんだ?」
ヴェイグは安堵しながらも余程気になるのか、また聞いてみた。
すると、諦めたのかヒルダは顔を薄く赤く染めながら口を開いた。
「ハーフが結婚したことがあるか、調べてたのよ。」
「ハーフ?ヒュ―マとガジュマが、でなくてか?」
「そう。でも、当たり前だけど、なかったわ。
ヒュ―マとガジュマが結婚したことですら、ないんだもの。」
誰かと結婚をしたいと思ったのだろうか、と思ったヴェイグは更に聞いてみる。
「好きな人でもいるのか?」
単刀直入な質問にヒルダは戸惑う。
頭を下にし、指をからめている姿を見て、
ヴェイグは段々といらついてきた。
普段なら絶対に見ないヒルダの行動が気にくわないのだ。
まさか、ティトレイが相手なのか?
あいつはうるさいが、確かにいい奴だ。
人を差別しないし、ヒルダも大切にしてくれるだろう。
それとも、ユージーンか?
もしかしたら、ヒルダがトーマの元で働いてた時から知っていたかもしれない。
そうなると、昔から想いを寄せていたとしても、おかしくはない。
あるいは、この旅でダンディで頼りになれる所に惹かれたか?
次第に思考が暗くなっていき、ヴェイグは頭がうな垂れた。
ヒルダはその様子を見て、何か勘違いでもしてないかと思うようになった。
とりあえず、本当に調べたかったことを伝えようと声をかけてみる。
「ハーフが誰かと結婚して、子供を持つでしょ?そうしたら・・・
長く生きれるかも分からないけど、見かけがどうなるのか気になったのよ。」
「見かけ?」
今まで頭を抱えていたヴェイグが反応したことを安心し、ヒルダは話を続けた。
「そう、見かけ。だって、ハーフは耳と角、それにしっぽが特徴じゃない。」
「それは・・・結婚の相手がヒュ―マかガジュマかも関係するんじゃないか?
ヒュ―マなら、もしかしたら1部だけヒュ―マかもしれないし、
ガジュマなら、ハーフと同じだったりするかもしれない。」
ヴェイグは、結局は実際に見てみないと分からないだろう、と言って締めくくった。
しかし、ヒルダがその答えで満足していない顔をしているので、更に付け加えた。
「結果がどうあれ、ヒルダの子供なら可愛いだろう。」
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、ヴェイグは耳まで真っ赤にして部屋を出て行った。
そんなヴェイグの言葉と表情に対して、ヒルダもしばらく顔のほてりが消えなかった。
だが、彼女はすぐに冷静さを取り戻し、外で待っているであろう彼の元へ走っていった。
―あとがき―
やっとできました、ヴェイヒル1作目!
いや〜1作書いてると、どんどんアイディアが出てきてなかなか進まず。
これからは頑張って書くんで、見捨てないで下さい。
しかし、本当にハーフの子供って見かけはどうなるんでしょ?
とりあえず、髪の毛はヒルダの黒で!女の子はウェーブ、男の子はストレート!
<2005.04.20>
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