町まであと少し、というところで休憩をとる。
休憩中、ヒルダはタロットカードをいじっていた。
そして、その横に静かにヴェイグが横たわっていた。
そんな2人の様子をみて、赤い髪の少年は口を開いた。
whatever!
「そんなの、恋人のあるべき姿じゃない!」
突然、何を言い出すかと思った仲間たちは彼の言葉に耳を傾ける。
しかし、何が言いたいのかよく理解できない。
「マオ?どうしたんだ、急に?」
ここは年長者が聞くべきだと思ったのか、ユージーンが聞いた。
「だって!ヴェイグとヒルダは恋人同士なんでしょ?
なら、恋人らしい行動をしないと変じゃない?」
人それぞれでは?
皆の心には答えがでていたが、言っても聞くような性格ではない。
ヴェイグはマオを満足させる為に聞いてみた。
「何が『恋人同士』らしい行動なんだ?」
「アイスクリームを買って一緒に食べるとか、
皆の前ではのろけ話をしたり、イチャイチャして、
手をつないで歩くとか、肩を抱くとか・・・」
「こうか?」
ヴェイグは素直にヒルダの肩を抱いた。
「そ、そうだけど、そうじゃないヨ!」
恋人の行動は自然とやるものだと信じているマオは、
これ以上彼に言っても無駄だと思い、
ヒルダへと質問を向ける。
「ヒルダも恋人らしい行動とかしたいでしょ?」
「あら。私は今のままで平気よ。坊やには分からないでしょうけど、
傍にいようとしてくれるだけで嬉しいもんよ、女ってのは。」
本当に幸せそうな顔をして笑うヒルダに少年は何も言えなくなる。
そして、それを嬉しく思ったのか、珍しく微笑んでいるヴェイグに仲間は驚く。
無愛想な自分を必要としてくれるヒルダが余程愛らしいと思ったのか、
皆の前にも関わらず、ヴェイグはヒルダへ熱い口付けを贈りつづけた。
男達が度胆を抜かれる中、アニ―は2人を羨ましそうに見つめた。
「いいなぁ。私もあんな事されたい・・・」
恋愛小説大好きな女の子にとっては、『ろまんちっく』らしい。
アニ―を想っている男は、今の言葉を密かに胸に残した。
「これで満足か?」
何時の間にかヒルダの腰に手を回しているヴェイグを見て、
マオは呆れてため息をついた。
「ていうか、勝手に2人の世界に入らないでほしいんですけど!
ヴェイグ達がイチャイチャしてる間に、どれだけバイラスがやってきたか知ってる!?」
先程と言っている事が矛盾している、と誰もが思ったが黙っておいた。
「お前が言った『恋人同士』らしい事をしたまでだ。」
ヴェイグはそう言い放つと、ヒルダの手を引いて町の方へと歩んでいった。
マオ以外は慌ててその後を追う。
「もう、いいよ。どうにでもして。」
自分は不要だと理解できたマオは、素直に黙って2人を見守ることにした。
―あとがき―
ちょっと(大分?)押しの強いヴェイグさん。
私の「ヴェイグが恋愛したら、こうなる」予想です。
鈍感なわりには、やることはちゃんとやりそうじゃないですか?
アニ―に想いを寄せてる人は皆様のご想像にお任せします。
<2005.05.05>
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