○月×日
面白くない。
ヒルダさんは「幸せだ」っていうけど、
私はそんなの信じられない。
『ヒルダさんには、もっと相応しい相手がいるはずです。』
警告をしたつもりだったのに。
ヒルダさんには、ただ笑われた。
だけど、やっぱり彼は相応しいとは思えない私は
人を使って、彼に意地悪してみようと試みた。
じぇらしー
「ヴェイグにいたずら?面白そうだな!」
まずはティトレイさん。
彼ほど扱いやすい人はいないと思う。
「でしょう?だけど、バクショウダケを料理に入れるのは定番かと思いますし。」
「ふーむ。まぁ、ヴェイグが笑ってる顔を見たい気持ちもあるが、確かに。」
「それなら、ヴェイグさんが差し出した料理に毒キノコが入ってる方が良くないですか?」
「・・・誰に渡すんだ?」
「ヒルダさん。」
あ、嫌そうな顔をしてる。
『とばっちりは嫌だ』ていう顔だ。
だけど、こうなる事は分かってたわ。
私は少しの間、うな垂れて黙った。
そして、上目遣いでティトレイさんをみつめる。
「良く・・・なかったですか?」
よっぽど効いたのか、ティトレイさんは首の骨が折れそうな勢いで横に振ってくれた。
よし。これで、実行してくれそう。
失敗に終わりました。
役にたたなかった・・・実行する前にばれて、どうする。
怒りを抑えながら、笑うのってしんどいのに。
しばらく、ティトレイさんは無視しよう。
次にユージーンの元へ行きました。
あの人とはできるだけ、関わりたくないんだけど・・・
マオが見当たらないから、仕方がない。
「ユージーン・ガラルド。私のお願いなら、何でも聞いてくれますか?」
突然声をかけたのに驚いたみたいだけど、
友好的な私の発言に喜んでくれた。
「あぁ、アニ―の為なら何でもやろう。」
「なら、ヴェイグさんのピーチパイ専用包丁の刃を割って下さい。」
彼も私の言葉に固まってしまった。
「それは・・・ヴェイグが悲しむだろう。」
「私はヴェイグさんが悲しむのを見たいんです。」
すかさず意図を伝えると、ユージーンは頭を抱え込んだ。
仕方がない。あまり、この人を相手にしたくなかったけど。
寂しそうに、でも可愛く上目遣いをするしかないか。
「何でもしてくれるんじゃ・・・なかったんですか?」
涙目で訴えるとユージーンはうろたえ、しばらくしてから大きなため息をついた。
「仕方あるまい。」
こうして、彼は私の頼みを聞いてくれる事になったんだけど・・・
また失敗しました。
今度は荷物をあさっている所をクレアさんに見つかったようだ。
あーあ、嫌なのを我慢してガジュマに頼んだのに。
また役にたたなかったな。
最後はマオ。
一番、頼むのが難しい人。
ティトレイさんの時と同じように、『悪戯』で誘ってみるけど、反応なし。
頑張って、引きつった笑顔を自然な笑顔にする。
「どうして?マオ、いつもヴェイグさんをからかって楽しんでるじゃない。」
マオは少し私を見つめてから、答えた。
「今のアニ―はアニ―らしくないから。」
よく言っている意味がわからない。
顔に出しちゃってたのか、マオはそのまま続けた。
「ヴェイグだって、十分頑張ってると思うヨ?」
「頑張ってるって何を?」
「ヒルダを幸せにしようとして、頑張って前よりしゃべるようになったかな。」
マオは私がなんでヴェイグさんを苛めようとしてるのか、分かってるみたい。
だったら、邪魔しないんで欲しいのに。
「あ、またブサイクな顔になってるんですけど。」
「ぶ、不細工って・・・失礼ね、私は悪くないわ!」
「認めてあげようよ、あの2人。幸せそうなんだからさ。
それとも、何?アニ―は2人に幸せになってほしくないの?」
「そりゃ・・・幸せになってほしいけど。」
ただ、ヒルダさんはヴェイグさんを選ばなくても良かったと思うだけ。
わざわざ無口な人を選んだら、会話とか楽しめないんじゃないかと思うから。
「じゃあ、もうこんな事止めようよ。ね?」
「う、うん。」
なんだか不思議。
マオの笑顔を見てると、私のやってる事がバカらしく思えてくる。
私よりも年下なのに、しっかりしてるんだな、て思う。
「よかった!やっと、いつものアニ―に戻ったネ。
それじゃ、そろそろ皆のところに行こうよ。今晩のご飯は何かなぁ?」
元気に先を歩いていったマオを慌てて追いかけた。
○月×日
だけど、ヴェイグさんへの意地悪は失敗に終わった。
本当に酷いことをする前に、マオが止めてくれたの。
マオが傍にいてくれてよかったな、って最近思う。
お父さんの仇をとることは、忘れてない。
だけど、彼がいてくれるから、優しい心も持っていられるの。
マオが差し伸べてくれた手が、すごく暖かかったのを今も覚えてる。
「なんてね。」
日記を書き終えて、読み返してみる。
「うん、恋する乙女みたいな日記が書けた。」
日記なんて、本当の気持ちを書いているとは、限らない。
―あとがき―
突然、書いてみました。
ガガ―っと書いたので、後々訂正していそう・・・
黒いアニ―を書いていたのですが、可愛いアニ―も好きです。
・・・混ぜちゃ、いかんな。
<2005.05.08>
ブラウザバック、ぷりーず