ふと隣にあるはずの温もりを感じなかったから、体を起こしてみる。
辺りを見回しても、求める姿は視野に入らない。
窓の外を眺めると、まだ陽はあがる気配がない。
また眠れないのかしら。
微かに覚めきっていない頭を重いと思いながら、寝室から出てみる。
だけど、家の中のどこにもいなかった。
外に行ったのかと思い、玄関の扉を開こうとすると何かにぶつかって開かない。
小さな隙間からのぞかなくても、すぐに探している人物であることが分かった。
ホットミルク
「はい。」
短く告げた私の手には温かいミルク。
彼は黙って、それを受け取った。
「寝付けないの?」
「ああ。」
会話とは言えないんじゃないかというぐらいに短い言葉の掛け合い。
ヴェイグがゆっくりと飲み物を喉に通す間、沈黙が続く。
「ホットミルクって、なぜ落ち着くんだろうな。」
「・・・そういえば、なぜかしら。」
一般的に、眠る前は温めたミルクが良いとは聞くけど。
そう付け加えると、ヴェイグは黙ってマグカップの中をのぞいた。
「俺は、ミルクを温めると仄かに甘みがでてくるからだと思う。」
思わず声に出して笑ってしまった私を不快に思えたのか見つめてくる。
だって、ヴェイグがここまで甘い物が好きだとは思わなかったから。
「あんたって、とことん甘い物が好きなのね。」
「・・・そうかもしれない。俺が好きなものは全部甘いな。」
小さく呟いたかと思えば、ヴェイグの手が私の頬へのびてきた。
彼の舌から味わえるのは、いつもと味が少し違うミルクの味。
「お前もすごく甘い。」
やけにいやらしい言葉に聞こえるのは、気のせいではないかもしれない。
照れ隠しに可愛げのない台詞が出てくる。
「甘い物は好きなんでしょ。」
「ああ。今、食べてもいいか?」
言いながらもヴェイグの手はすでに可笑しな所へと動いていた。
その状況で、反抗しても意味がないのは一目瞭然だ。
「好きにしたら?」
―あとがき―
かなり短くなってしまったお話です。
てか、甘い・・・ですか、これ?
・・・次にお題やる時は、「バカップル」を目指します。
<2005.07.21>
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