最近、ヒルダが外出するようになった。

仕事をしに行っているから、収入のない俺が何か言える立場ではない。

だが・・・何故いつも、あいつがヒルダの隣にいる?





最近、あの子が遊びに来るようになった。

それも、決まって、私が仕事で出かけている時。

一体、ヴェイグと何をしてるっていうの?






浮気疑惑






 「こんにちは、ヒルダさん。今日もお仕事ですか?」


医者になるから忙しくなると言っていたはずなのに。
なんで、この少女は頻繁に遊びに来るのだろう。


 「ええ、あの馬鹿が口コミを広げすぎてね。」

 「いい事じゃないですか。皆、ヒルダさんの占いを信じてるんですよ。」

 「そうかしら。ただの暇つぶしだと思うわ。」

 「・・・そうだとしても、雇われてるんですから、ちゃんと仕事してきてくださいよ?」






 「お、ヴェイグ!また会ったなー。」


こいつは何故いつもヒルダが仕事に行く時に来るのだろう。
そして、いつもヒルダと共に仕事へ出かけに行く。


 「相変わらず無愛想だな、お前。」
 
 「お前には関係ない。」

 「また、それかよ。まぁ、いいや。またヒルダ借りてくぞ。」

 「好きにしろ。」






ヒルダがティトレイと仕事に出かけるのを見送って。


ヴェイグがアニ―と見送ってくれるのを後にして。



この後、2人は仲良く自分のことを忘れて時を過ごすのかと思い始める。

だけど、自分はそれに対して何もしようとは思えない。







依頼人の家があまり離れていなかったのと
依頼人が占いの結果をすぐに受け止めてくれたおかげで、仕事はすぐに終えた。
やはりティトレイがいてくれると、仕事が簡単に収まって楽だ、とヒルダは思う。


 「ありがとな、ヒルダ。んじゃあ、帰るとするか!」

 「こんなに早く帰っても、迷惑に思われるかもね。」

 「何言ってんだ?あいつが嫌がるわけないだろ?」


それはどうだろう。
ヴェイグは近頃、自分と距離をおいているような気がする。
いや、実際に近寄ろうとはしないのだ。
何か後ろめたい事をしているからではないのか。


帰りたくはなかったけど、他に行くあてもないから仕方なく帰る。
だけど、誰も迎えてはくれなかった。






 「ヴェイグさん、いい加減に脱いでください。」

 「だが、ヒルダが帰ってきたら・・・」

 「この時間は帰って来ませんよ。安心してください。」

 「だが・・・」

 「ヴェイグさんが脱がないなら、私が脱がしますよ?」

 「だが・・・」

 「いつまで我慢してるつもりなんですか?」


さすがは医者の卵なだけあって、なかなか手ごわい。


ヒルダがティトレイの紹介であいつと一緒に仕事へ出かけるようになった頃、
たまたまアニ―が遊びに来た。
そして、俺の異変に気づいた途端、ヒルダが仕事で出かけると聞いた時はいつも来るようになった。


 「すきあり!」

 「お前ら!何やって・・・」


物思いにふけった瞬間、アニ―には服を脱がされ、
何故かティトレイが部屋に入り込んできた。


 「・・・酷い。こんな状態になるまで、放っていたんですか!?」

 「な、何だよ、これ。お前、何があったんだ?!」

 「ティトレイ。何故お前がここにいる?」

 「そんなの関係ねぇだろ!そんな事より、自分のこと考えろよ!」

 「ヒルダは?」

 「ここにいるわよ。」


何が起こっているのか分からない。
いや、分かりたくない。
先程のアニ―との会話を聞いた限り、2人の仲はよほど親密だったみたいで。

そんな気持ちで部屋から顔を背けていた。



ヒルダが見ていない事をいいことに、ヴェイグは脱がされた服を着直そうとするが、
ティトレイが体を押さえつけた。


 「ヒルダさんもヴェイグさんを叱ってください。」


アニ―に無理やり腕を引っ張られて、ヒルダは思わずヴェイグの姿が目に入る。




 「・・・どうしたのよ、その体・・・」


ヴェイグの右半分の体が凍っている。
右腕を動かすのが辛そうだ。
ここまで凍っていながらも、生きているのが不思議なくらいだ。


 「フォルスの暴走ですよ。ヴェイグさんはフォルスを抑えきれなくなってます。」

 「だけどよ、何で暴走してんだ?」

 「それは・・・恐らく、ティトレイさんのせいじゃないかと。」

 「俺?なんで俺なんだ?」

 「だって、最近いつもヒルダさんと一緒に」

 「アニ―。黙っててくれないか。」

 「・・・やきもちですよ、要するに。」


ヴェイグの努力は空しくも報われず。
アニ―の発言に他の2人は驚く。


 「俺がヒルダと仲が良いって疑ってんのか?ありえねーって!」

 「そうよ。なんで、私がこんな馬鹿と仲良くしなきゃならないのよ。」

 「そうだぜ、ヴェイグ。俺は姉貴一筋なんだからな。」


それはそれでどうなんだろう、とティトレイの言葉に疑問をもつが、放っておいた。


 「本当に・・・なんでもないのか?」

 「何もないわよ。言うのも恥かしいけど・・・昔も今も、アンタしか愛してないから。」


頬を赤く染めて呟かれた言葉にヴェイグは安心したのか、
彼の体の半分を覆っていた氷が徐々に解けていく。


 「俺もだ。」


その場で抱き合う2人をおいて、アニ―とティトレイはそそくさと帰っていった。






 「そういえば、何故お前はさっき部屋に入ってこなかったんだ?」

 「な、なんの事?」

 「俺がアニ―に服を脱がされた時、お前はこっちを見ていなかった。」

 「さあね。自分で考えなさい。」


さすがに、ここで『自分もやきもちを焼いていました』なんて言ってしまっては、
朝まで離してくれないだろうと思ったヒルダは適当にごまかしておいた。


もちろん、恋愛に関しては疎いヴェイグには一生解けない問題である。






 ―あとがき―
う〜ん?2人の浮気疑惑を同時進行って難しい・・・
むむむ・・・こういう時は、TORを遊ぶべし!
待ってて、ヴェイグ&ヒルダ!(逃亡)
<2005.06.22>

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