「私も死んだら、あの中の1つになるのかしら。」
雲ひとつない星空を見つめ、ヒルダは呟いた。
隣に座っていたヴェイグは首をかしげる。
「今読んでる小説にそんな台詞があるのよ。」
恋愛小説にね、と心の中で思いながら説明をし始めた。
「不治の病を持った彼女が、死ぬ前に彼氏と星空を見つめて呟くの。」
「男はなんて答えたんだ?」
「さぁ。まだ、そこまで読んでないわ。」
本当は読んだが、ヒルダは黙っておいた。
ヴェイグだったら、なんと答えるかが気になったのだ。
「・・・俺は毎晩星を見つめて悲しんでいるだろうな。」
「悲しむ?それが彼女が求めるものでなくても?」
「ヒルダの温もりも笑顔も感じられなくなるんだろう。
そんなの・・・俺には耐えられるわけがない。」
やっぱり小説のようにはいかないか。
ヒルダは小説での男の台詞を思い出す。
『だったら、俺は毎晩その星を見つめて微笑んでいよう。
お前が一人でも寂しくないように、話しかけよう。』
アニーも涙を流したこの台詞。
彼女によると、世間の女性は大体が感動したらしい。
しかし、ヒルダは何も感じなかった。
何故ならその台詞は、女だけが寂しがっているように聞こえたから。
男は彼女がいなくても、平気そうな言葉だったから。
だから、ヴェイグの言葉は心に染み渡った。
単なる彼の性格の問題なのかもしれない。
だが、いなくなっても自分を想い続けてくれる気持ちがうれしかった。
いつの間にか涙を流していたらしい。
ヴェイグの大きな手が、ヒルダの頬を優しく触れる。
「あんたがいてくれて良かった。」
「これからもずっと傍にいる。」
「そうね。私も嫌と言われても、離れてやらない。」
星が満開に咲く空の下で、二人は甘い口付けをした。
星空