綺麗な手だねぇと言われるのは構わない。
だけど、なんでこの人は手を重ねようとするのかしら。






セクハラ






 「占いができませんので、放してもらえませんか?」


すまんすまん、と言いながらやっと手が開放された。
しかし、未だにジロジロと汚い目でヒルダの手を見ている。


なんなのかしら、このおじいさん。
奥さんを亡くして落ち込んでたんじゃないの。

依頼人である彼の娘が教えてくれた事は間違っていたようだ。


それでもお金はもらってしまったから、仕事をしなければならない。
嫌々カードをめくっていると、共に来たヴェイグが部屋へ入ってくる。


 「ヴェイグ。仕事中は邪魔しない約束だったでしょ。」


彼の姿を見て落ち着いた自分がいたけど、お客さんの手前。
相手につけこまれるような素振りは行わないほうが賢明だ。


 「だが、このじいさんはお前を変な目で見ている。」


そう言うなり、ヴェイグはおじいさんの胸元を掴んで、無理やり席を立たせた。


 「帰れ。」

 「だ、だが占いを・・・」

 「帰るんだ。」


おじいさんを殺しかねない迫力で、ヴェイグは客を部屋から追い出した。


 「ちょっと!もうお金もらってたのよ?どうするの。」

 「返せばいい。」

 「だけど、信頼が失われるじゃない。」

 「またティトレイのコネを使え。」

 「あのねぇ、そういう問題じゃなくて・・・」

 「『スケベじじい』の相手なんかしなくていい。」


自分の事を心配してくれているヴェイグに感謝して、ヒルダはそっと彼の手を握った。


 「ありがとう。」








 ―あとがき―
ちなみに『スケベじじい』はティトレイが使っているのを使用。
セクハラって微妙に難しいなぁ・・・
<2005.08.17>

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