夢のある未来
〜お兄ちゃんもお父さんもお母さんも大好き!〜
トントントン。
お母さんが包丁で鳴らす音は大好き。
ウーシュの大好きな食べ物が生まれる音だもん。
だけどね、ピーチパイは好きだけど、お父さんやお兄ちゃんの大好物なの。
だから、ウーシュはいつもクッキーを食べてるんだ。
2人がいる時は食べないって、お母さんに言ってあるの。
そうしたら、お兄ちゃんもお父さんもいっぱい食べれるでしょ。
「ウーシュ、ただいま!」
特訓から帰ってきたお兄ちゃんはウーシュをギュってしてくれる。
すごくうれしくなるんだ。
幸せなんだよ、お兄ちゃんがウーシュを好きでいてくれて。
・・・なんだか、変なにおいしてきたけど、大丈夫かな?
「母さん!火を止めて!焦げてる!」
「どうして焦げるのかしら。本の通りにやってるのに。」
「だから、火を先に止めようよ!」
大丈夫じゃなかったんだ。
お兄ちゃんが火を止めたから、ご飯がどうなったのか見たくてイスを頑張って持っていって。
だけど、重すぎて運べなかったら、お兄ちゃんが運んでくれた。
やっぱり、お兄ちゃん大好き。
「うわー。真っ黒だねえ。」
「ウーシュは料理できるようになるんだぞ。」
「ちょっと、トラウム?それ、どういう意味よ。」
「母さんはピーチパイが作れたら、それでいいじゃないか。僕がご飯作るよ。」
「わーい!お兄ちゃん、おむらいす作って。」
「よし、オムライスにしよう。」
トントントン。
お兄ちゃんの包丁の音も大好き。
ウーシュの大好きなものを作ってくれるから。
「ヒルダ、なんだか焦げ臭いが・・・」
「言わないで、分かってるから。」
なんだか気分が悪いのかな?
お母さん、イスに座って縮こまってる。
そんなお母さんを心配そうに見てるお父さんもウーシュは大好き。
抱きついたら、ひょいってもちあげてくれた。
「お父さん、今日はお兄ちゃんがおむらいす作ってくれるの!」
「トラウムが?作れるのか?」
「バカにしないでくれる?俺だって、もう7歳だよ。」
「(7歳で料理作れるのは可笑しいんじゃないのか)」
お父さんは何か考えてるのかな。
何もしゃべらなくなっちゃった。
「怪我には気をつけろ。」
「大丈夫だよ、ウーシュがいるもん。ね?」
「そうだよ。ウーシュがいるから、大丈夫なの。」
「余所見したら・・・」
「痛っ。」
「怪我したな。」
「う、うるさいな!」
うるさいだなんて、言っちゃダメだよ、お兄ちゃん。
お父さんだって、心配してるんだよ。
ポタポタ。
この音は大嫌い。
怖い音だから、大嫌い。
皆がウーシュを嫌いになっちゃう音だから。
「ウーシュ、お願いできる?」
それでもお兄ちゃんはウーシュを嫌いにならない。
「大丈夫か?」
それでもお父さんはウーシュを嫌いにならない。
「何やってんのよ、トラウム。ウーシュ、早く治療してあげて。」
それでもお母さんはウーシュを嫌いにならない。
「うん!」
だから、ウーシュはお兄ちゃんもお父さんもお母さんも大好きなの。
ウーシュを嫌いな人がいても、平気なんだよ。
「いただきまーす!」
お兄ちゃんが作ってくれたおむらいすは、すごく美味しい。
外で食べるおむらいすとは違って、赤いのが上にかかってないから、もっとおいしい。
「おいしい?」
「おいしーよ!」
「ああ、美味い。」
「別に父さんの意見聞いてないんだけど。」
「・・・・・・」
「トラウム、人に褒められてる時は素直に感謝しなさい。」
「・・・ありがとう。」
「また今度作ってくれ。」
「・・・ウーシュや母さんが言わなきゃやらない。」
今度はお父さんが元気なくなっちゃった。
お兄ちゃん、なんでお父さんには優しくないのかな?
「あ、ウーシュ。ちゃんときれいに食べろよ。」
お兄ちゃんは、ナプキンでウーシュの口を拭いてくれる。
「ありがとう、お兄ちゃん。大好き!」
「俺もウーシュが大好きだよ。」
「あら。お母さんのことは?」
「「大好き!」」
「俺は?」
「大好き!」
「・・・嫌い、じゃない。」
今日も楽しい一日だったの。
ウーシュはお父さんもお母さんもお兄ちゃんも大好きで。
ウーシュのこと大好きでいてくれるのです。
―あとがき―
うわーん。5歳児ってどこまでしゃべれるんですか?苦笑
彼女が血を嫌いな理由は、今後出したいと思います。
タイトルはこれを最後まで読んだら、理解できますよ・・・ね?
<2005.07.28>
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