最近、週末になると必ず1人の娘と会う。
それを鬱陶しいと思う自分がいるのに、
何故か私は必ずいつも行く公園へ出向く。
あの公園へは独りになる為に行っていたはずなのに、
何時の間にかその娘に会う為になっているように思える。
いや、それは私の気のせいだ。
あの娘に会いたいなどと、私が思うはずがない。
2.思い出
その娘は格別美人というわけでもなく。
頭も賢そうには見えない。
なのに、何故こうもあいつの事が気になるのだろう。
「和仁様。今日はどちらへ参られるのですか?」
「あの勾玉の女がいる所だ。」
娘は何故かいつも勾玉の耳飾をつけて来る。
一度、その理由を聞いてみたが
『これの持ち主にいつでも返せるようにつけてるの。』
と言ったきり、黙り込んでしまった。
普段から笑顔しか見せなかったから、
垣間見えた寂しそうな笑みが今も印象に残る。
だから、時朝には『勾玉の女』と伝えた。
娘の名前はさんざん聞かされて覚えさせらたが、
実際に使うのが嫌だったからなのもある。
それが何故かも分からぬが。
「和仁さん、おはよう!」
車から降りると、いつでも元気そうな娘が近寄ってくる。
「やっぱり、今日も和仁さんは格好良いね。」
少し頬を染めながら言うこの台詞にも慣れた。
だが、どうして毎回言っていて、飽きないんだろうか?
私が公園に来る時、白のワイシャツに黒のズボンしか着てこない。
それを飽きずに言い続けられる事が理解できない。
「和仁さん?どうしたの、ぼーっとしちゃって。」
それでも、こやつが幸せなら良いか、と思ってしまう自分に気づく。
「もう来るなと言ったはずだろう。」
「だけど、和仁さんは必ずここに来てくれるよね。どうして?」
そんなの、自分が聞きたい事だ。
この娘なんか、知らないはずだ。
なのに何故いつも会おうとするのだ?
私は・・・本当にこの娘を知らないのか?
私はこの娘を知っている。
根拠はないが、そう思う。
「和仁さん?大丈夫?」
心配そうに私を見つめる顔に手を添えてみた。
この顔は以前から知っている。
何故だ?一度も見たことがない顔なのに。
遥か昔に見た気もしない。
『お前に力を貸してやろう』
誰だ?この言葉は誰が言った?
何かを思い出しそうなのに、未だにひっかかる。
『あいつが憎い・・・私から東宮の座を奪ったあいつが!』
「和仁さん!」
気づけば、女の声がした。
私の服を掴んでゆすっているが、誰なのか分からない。
「誰だ、お前は?気安く私に触れるな。」
娘はひどく傷ついた顔をするが、私の知ったことではない。
そいつを振りほどいて、私は時朝の元へと向かった。
庶民と同じ空気を吸うなど、ありえないことだ。
神聖なる私は、ここにいるべきではない。
「帰るぞ、時朝。早くこんな庶民が集まっている場所から離れるんだ。」
後ろで先程の娘が何か叫んでいるようだが、私には関係ない。
何故、私はこのような世界にいるのかを知る方が大切だ。
―あとがき―
えっと・・・お題に沿っていない?
い、いやいや、沿っていますよ!えぇ、そうですとも。
あぅぅ。とりあえず、和仁の語り手は控えよう。
言葉使いが難しいです、私には・・・でも好きだー!(?)
<2005.05.05>
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